〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

JASのホノルル線はやっぱり飛ばしちゃダメだった

 以前取り上げたJASのDC-10。導入の最大の理由が「長距離路線も飛べる機材が欲しかったから」でしたが、導入後3年かかってようやく就航したホノルル線もわずか3年で撤退に追い込まれました。

 


迷旅客機列伝「背伸びし過ぎて持て余す」日本エアシステムDC-10

 

※以前の記事はこちらを参照して下さい。

meihokuriku-alps.hatenablog.com

 

で、わずか3年で撤退せざるを得なかったJASのホノルル線とはどんなダイヤだったのでしょうか。1992年8月の時刻表が手元にありますので、当時のダイヤを見てみましょう。

 

成田ーホノルル

JD050便 成田20:00発→ホノルル8:10着(月・金曜運航、月曜30分遅発着)

成田発の時間に関してはそう悪くはありません。今も昔もホノルル線は夜に出発して翌朝到着、というのが一般的ですし、着いたその日は十分観光できますので、ダイヤ自体はいい感じです。では帰りの便はどうでしょうか。

 

ホノルルー成田

JD051便 ホノルル10:10発ー成田13:15(+1)着(月・金曜運航、月曜30分遅発着)

欲を言えば午後発にしたほうがより長くホノルルに滞在できますが、今でもホノルル午前発の便はありますし、特に金曜発は到着後そのままシンガポール線に飛ばしていたことを考えると妥当なところではないかと思います。

 

それよりも問題なのは運航日。月曜と金曜の週2便では旅行会社はツアーを組みにくかったのではないかと思います。往復JAS便利用となると、

①成田月曜夜出発→ホノルル月曜朝着、金曜朝発→成田土曜午後着の4泊6日

②成田金曜夜出発→ホノルル金曜朝着、月曜朝発→成田火曜午後着の3泊5日

③成田月曜か金曜の夜出発→戻りは翌週の火曜か土曜の7泊9日

の3パターンしか組めません。一方の他の会社はというと

 

日本航空(週30便)

JL92便 成田17:40発(月・金・土曜運航)

JL80便 成田18:40発(月・火・木・金・土曜運航)

JL76便 成田19:10発(毎日運航)

JL94便 成田19:40発(日曜運航)

JL74便 成田20:55発(毎日運航)

JL72便 成田22:00発(毎日運航)

 

ノースウエスト航空(週19便)

NW10便 成田19:00発(毎日運航)

NW82便 成田20:00発(月・水・木・金・土曜運航)

NW22便 成田20:55発(毎日運航)

 

ユナイテッド航空(週22便)

UA822便 成田18:00発(毎日運航)

UA830便 成田18:45発(毎日運航)

UA834便 成田20:00発(金曜運航)

UA826便 成田21:00発(毎日運航)

 

コンチネンタル航空(週7便)

CO8便 成田18:15発(毎日運航)

 

中華航空(現チャイナエアライン)(週5便)

CI18便 羽田19:35発(月・火・水・金・土曜運航)

 

・・・これだけの便数があるなら日程的にも利便性の面でも他の航空会社でツアーを組んだほうが作りやすいし売りやすいですよね。特にJALやUAなんか少なくとも1日3便は出ているわけですし、知名度もJASよりはるかに上なんですから。

週2便しかない上に知名度もないJAS便利用のハワイツアーを旅行会社に作ってもらう方法はただ一つ、他社よりも破格の値段で航空券を販売すること。手元に搭乗率の資料がないので断定はできませんが、恐らくJASのホノルル線は利便性の悪さと知名度のなさで相当搭乗率が悪かったか、相当なディスカウントをして無理矢理乗客を集めていたかのどちらかだと思います。これでは長続きしなかったのも仕方ないですね。

 

今はどうかわかりませんが、アメリカの航空会社は基本的にデイリー運航を目指し、デイリーで飛ばせなければ参入しないそうです。一定の利便性を確保できなければ乗客は集まらないことを長年の熾烈な競争で知っているからでしょう。そう考えると国際線の経験値がゼロに近かったJASは、勝ち目のないハワイなんて背伸びはせず、まず近距離で実績とノウハウを作るべきだったと思いますね・・・この会社もまた、バブルに踊らされた会社の一つだったのかもしれません。

 

(10/2追記)昨日買った古本の「JAL JET STORY」の中にJASのDC-10の事も書かれていたのですが、その中にホノルルの地上業務を委託していたアロハ航空の副社長に「定期路線と言ったってツアーで集めた客を運んできて、数日後に同じツアー客を乗せて戻るだけじゃないか。これじゃチャーター便と同じだ、長続きしないよ」と言われ、その通りになった、という記述がありました。やはり日本からの格安ツアー客頼みの路線だったようで、ハワイ側からの乗客はほとんどいなかったようです。少なくともホノルル線に関しては交通機関としての役割を果たしていなかったようで、やっぱりホノルル線は無理がありすぎましたね。

 

 

JAS Japan Air Systems